都市緑地法等一部の改正に伴う生産緑地の規制緩和に関して
前回「都市緑地法等の一部を改正する法律案」に関して解説しました。
今回は都市緑地法の改正の中で、土地活用に関わる「生産緑地の規制緩和」について詳しく解説していきます。
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法改正のおさらい
「都市緑地法等の一部を改正する法律案」は平成29年2月10日に閣議決定されました。
今回解説する「生産緑地の規制緩和」に関してもこの法改正で決定しました。
国土交通省は今回の改正案の提出の背景を以下のように説明しています。
このように、様々な役割を担っている都市の緑空間を、民間の知恵や活力をできる限り活かしながら保全・活用していくため、関係法律を一括して改正し、必要な施策を総合的に講じます。」”国土交通省引用
簡単に説明すると国土交通省は、「農地を含め都市の緑空間について民間を活用しながら保全していきたい」ということになります。
そして、都市の農地について災害時の避難地としての防災面、緑空間での自然とのふれあいや近隣でのコミュニティづくりなど多くの役割に期待をしています。
生産緑地の面積要件の緩和
現行の規定では生産緑地に指定するための要件として当該土地の面積が500㎡以上あることと定められていました。この500㎡以上という要件は都市部の農地としては広めと考えられます。
今回の改正案では、この面積要件を緩和しようとしています。具体的には、生産緑地法3条2項が追加され、各地方自治体が一定の基準(300㎡)のもと面積要件を条例で変更できるようにするという改正が予定されています。
面積要件が300㎡以上となった場合、東京23区内においては7~8割の農地について生産緑地制度が適用される可能性があります。
生産緑地内の施設の制限緩和
改正案では生産緑地内の施設の制限も緩和されました。
現行法では、生産緑地内に設置できるのは生産・集荷・貯蔵・保管・処理・休憩に用いる施設のみであり、所有者自身が農地の作物を作る以外で収益を得ることが難しい状況にあります。
改正案では地元の農産物等を用いた商品の製造・加工・販売や、地元の農産物を用いたレストランのための施設を設置することができるようになります。
この改正の背景にあるのは、販売やレストランの経営などで生産緑地の収益化をしやすくすることで生産緑地の維持を図るという意図があると考えられます。
ただし、製造・加工・販売などの施設の敷地は宅地となり、税制の面での優遇は受けられません。
具体的には、固定資産税の評価額が”当該生産緑地内の農地等の価額を基準として求めた価額+農地から転用する場合において通常必要とされる造成費相当額”となり、また施設敷地の面積分は納税猶予の対象外になります。
そのため収益と税負担のバランスで想定よりも施設設置が広まらない可能性もあります。
こういった税制面での懸念点もありますが、土地活用の幅が広まったことには間違いなく、生産緑地を維持する際の有力な選択肢のひとつになると考えられます。
土地活用に関わる法律関係