シェアサイクルの市場規模はどれくらい?需要はあるの?現状や課題を詳しく徹底解剖!
街で見かけるシェアサイクルのポートを見て、自分が所有している土地も利用できるのか、どれくらい利用者がいるのか、詳しく知りたいという人も多いでしょう。
日本でのシェアサイクルの市場規模は年々拡大しています。コロナ禍にあって、自転車の需要が増えたことや、さまざまな大手企業の参入により利用しやすい環境が整ってきたことなどが理由です。
この記事ではシェアサイクルの市場規模についての理解を深めるために、シェアサイクルの仕組みから世界のシェアサイクルの現状、政府による取り組みまで詳しく紹介していきます。
正しく理解して、土地活用のアイデアの1つとして検討してみてください。
シェアサイクルの仕組みとは
シェアサイクルは、従来の自転車レンタルショップと少し仕組みが異なります。
まず、シェアサイクルは自転車が設置されているポートから借りてポートに返却します。借りたポートでなくても、街に設置されているポートのどこに返しても問題ありません。現在、都市部では多くのポートが設置されており、観光客や住民に広く利用されています。
支払いには、ICカードやスマートフォンアプリを使用します。会員登録が必要になりますが、最初に登録すれば次回からスムーズに貸し借りができるようになるので便利なサービスです。
費用の面でも、従来の自転車レンタルとは違います。平均で30分100~150円くらいで借りることができるので、気軽に近くまで移動したいといった感覚で利用できます。
日本におけるシェアサイクルの市場規模
日本国内のシェアサイクルの導入状況は、全国225都市に上ります。設置されている台数は、東京・横浜・仙台の合計で約8600台です。(2019年3月31日時点 国土交通省「シェアサイクルに関する現状と課題」より)そのうち、シェアサイクルのシステムは主にドコモ・バイクシェアとOpenStreetが使われています。
世界的に見ると、シェアサイクリング市場は2027年まで大幅に成長すると見込まれています。理由の1つとしては、仕組みや利用の仕方についての認知度が上がり、一定の利用者が定着してきたことがあります。
今後も、電車やバス、タクシーのような公共交通機関と連携する交通手段としての活躍が期待されています。
また、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、自転車移動をする人が増えたことも大きな要因です。日本では、政府によって自転車のシェアリングシステムにおける技術の進歩や、インフラ整備などに積極的な取り組みが行われています。
発展途中の日本のシェアサイクルには課題もある
シェアサイクルには、さまざまな課題も残されています。まだ歴史の浅い移動手段だからです。
世界では、既に公共の乗り物として位置付けられている国も多く、ポートレス化が進む中で大量の乗り捨てが問題になっています。日本では、ポート型が中心なので、乗り捨ての問題はありませんが、公共の乗り物としての利便性を良くするための規制緩和は課題の1つです。
また、自転車を安全に利用できる環境づくりが遅れている都市があることも問題点といえます。快適に自転車を利用できるような整備が整っていない場所では、利用者が増えません。
さらに、ポートの数を増やすことも課題となっています。日本では、まだポートの密度が低いのが現状です。ポートが多ければ利用がしやすく、さらに利用者数を増やすことができるでしょう。
そしてもう1つ、シェアサイクルのシステムはドコモとOpenStreetを筆頭に複数あるため、利用するエリアによってシステムが異なることも利用者にとって障害になります。度登録をしなければ利用ができないとなると、出かけた先で気軽に利用するという気にはなれないでしょう。
電車やバスなどの交通機関との連携がうまく図れていないことは、今後のシェアサイクルの改善です。シェアサイクルの事業の大きな目的の1つだからです。もともと、シェアサイクルは公共サービスと民間事業の両側面があり、民間事業の収益の不足分は公費でまかなわれています。
シェアサイクルのさらなる発展のためには、こうした課題をクリアする必要があるでしょう。中でも、ポートの設置を充実させることは大きな目標でもあります。
ですから、公共交通機関の近くの土地を所有しているなら、地域の活性化にもつながるシェアサイクルに活用するのもおすすめです。
海外のシェアサイクルの事例
シェアサイクルにおいて、日本は後進国に該当します。世界では、日常の移動手段として導入されていますが、日本での普及率は緩やかです。利用のしやすさから考えると、世界で主流になっている乗り捨て型に軍配が上がります。
現在の日本のように、ポートの数が不足している状況では気軽に利用できる乗り物とは言い難いでしょう。この項目では、いくつかの国のシェアサイクルの利用状況について紹介します。日本のシェアサイクルと比較して、理解を深めましょう。
フランス
パリで2007年から設置が開始された「Velib」は、市内に約1800ヶ所のポートがあります。シェアサイクルの台数は23,600台にも上ります。費用は1日約600円、30分までは無料です。
2017年からは、街のどこにでも乗り捨てられるフリー・フローティング型の「Gobee Bike」がスタートしています。アプリのマップで自転車がある場所を特定して、サドルの後ろに示されているQRコードを読みこむことでロックが解除される仕組みです。使用が終わったらロックすれば完了です。
ただし、北京ほどではありませんが、シェアサイクルの放置はパリ市内でも問題になっています。ポート式の「Velib」は、2011年に電動アシスト自転車にモデルチェンジしたり、2016年に電動スクーターを導入するなど、利用者を増やすための課題改善に努めています。
フランスでは、パリのみならずミラノやリヨンなどの都市でも広がっており、世界有数のシェアサイクルの市場規模になっています、
アメリカ
ニューヨークでのシェアサイクルの規模は750ヶ所のポートと9800台のシェアサイクルで、現状では2013年にスタートした「Citi Bike」が国内最大規模のシステムです。
ニューヨークでは自転車の利用者が多く、自転車レーンの整備も進んでいます。また、都市部の主要な地域の面積が小さいため、自転車での移動にも向いています。
ポートの設置場所は、コミュニティワークショップでの提言のほか、ニューヨーク市のウェブサイトに適した場所を提案することができるようになっています。ですから、利用する住民の要望が設置場所に反映されているのです。
料金システムは、年会費または利用パスを貸し出しステーションで購入して、30分経過したら15分ごとに加算される仕組みになっています。
ニューヨークでは通勤や通学にもシェアサイクルが利用されることが多く、拡大を続けています。今後も、ニューヨーク周辺のエリアにもポートの設置を広げていく構想もあり、ますます定着していくでしょう。
デンマーク
コペンハーゲンは、世界において自転車利用の先進国です。シェアバイク導入についても、いち早く1995年から「City Bikes」の運用がはじまりました。2014年からは、システム更新によって電動機能付きシェアバイクが使われています。
導入当初は、利用する際に料金を入れて返却すると戻ってくるデポジット制でした。ころが、デポジットが少額であることによって返却されない自転車が相次ぎ、世界の流れに合わせてクレジットカードからの課金制に切り替わりました。
現在では、GPSによる目的地案内や電車の時刻表示、放置自転車の発見などの便利な機能も利用できます。こうした機能を取り入れたことで、利用者は確実に増えています。
中国
北京では、オリンピック開催前の2007年からシェアバイクの運用がスタートしました。観光客のためのサービスだったため翌年には一旦終了し、2009年から地域住民へのサービスとして広がっていきました。
2016年から「mobike」によるどこでも借り受け・返却が自由なサービスがスタートしています。自転車のQRコードを読み取って解錠と施錠をし、利用時間に応じて料金が発生する仕組みです。専用駐車場を設置する必要がないため利用しやすく、急速に普及しました。2019年の時点では中国360都市に1950万台ものシェアサイクルが設置されています。
しかし、過当競争の末に都市部でのシェアサイクルが飽和状態になってしまい、莫大な数の自転車が破棄される結果になってしまいました。シェアサイクルビジネスから撤退する企業も相次いだため、中国のシェアサイクルの規模は少しずつ縮小しているのが現状です。今後の、中国でのシェアサイクルの動向が注目されています。
シェアサイクル普及促進を目的とした政府の取り組み
新型コロナウィルスの感染拡大を受けて政府は「新しい生活様式」を推奨しており、その一環で自転車通勤の促進にも力を入れています。シェアサイクルを拡大させることも、その一翼を担うでしょう。
公用地にサイクルポートを設置し、規制緩和やルールの明確化を検討することによって、利用しやすいポートの設置を促進することは、取り組みの1つです。また、分かりやすい案内看板の設置によって、鉄道利用者の誘導なども行われています。
さらに、自転車活用推進官民連携協議会のウェブサイトも設置されています。自転車通勤を促進することは、優良企業の条件という位置づけになりつつあるのです。
まとめ
日本国内のシェアサイクルは、ポートで解錠して利用した先の近くにあるポートに返却するというタイプを取り入れています。シェアサイクルの市場規模は少しずつ拡大していますが、世界的に見るとややスローペースといえます。急速に普及するためには、課題を1つずつクリアしていく必要があるでしょう。
昨今では、コロナウィルスの感染拡大の対策として、自転車通勤が推進されています。こうした時代の風潮に乗って、今後ますます拡大を続けることが予想されます。
公共交通手段の近くにある狭小地や、オフィスの近くの土地など、ポートの利用に適した土地を所有している方は、長い目で見てシェアサイクルのポートに活用するのもおすすめです。
狭小地での土地有効活用